原状回復に関する一般的な考え方(通常損耗と借主負担の区分など)を整理し、店舗契約での注意点を解説します。
店舗の退去が決まり、貸主から原状回復工事の指示を受けたとき、「この費用は本当に借主が負担すべきなの?」と疑問に感じたことはないでしょうか。原状回復の費用負担は、国土交通省が示すガイドラインや自治体の取り扱いに基づいていますが、その内容を正確に理解しているテナント企業は少ないです。本部担当者が知っておくべき、原状回復ガイドラインの基礎と実務的な判断ポイントを解説します。
原状回復ガイドラインとは
国土交通省は、賃貸住宅の原状回復ガイドラインを示していますが、商業テナントについて同程度の詳細なガイドラインは公式には存在しません。ただし、東京都や大阪府などの自治体が商業テナント向けのガイドラインを策定している場合があり、また、オフィスビル管理組合が標準的な基準を示していることもあります。
重要なのは、「通常損耗は貸主負担、テナント特有の損耗や造作費用は借主負担」という大原則です。この原則に基づいて、個別のケースを判断していく必要があります。
通常損耗と借主負担の区分
通常損耗(貸主が修繕する)
- 壁紙・床材の経年劣化による変色・褪色
- 日光による壁紙・床の色褪せ
- 建物躯体の経年変化
借主負担
- 借主が後付けした造作(パーティション、床下地、造作天井等)
- 通常使用の範囲を超えた傷・汚れ(壁穴、床の深いキズなど)
- 借主の特定用途に合わせた設備・配管
ただし、この区分は物件・地域・貸主の取り扱いによって異なります。同じ床材の剥がれでも、「経年劣化」と判断される場合もあれば、「借主の管理不足」と判断される場合もあります。
自治体・エリアによって運用が異なる理由
商業テナントの原状回復については、統一的な基準がないため、各自治体や不動産協会が独自のガイドラインを運用していることがあります。
東京では「東京都住宅政策本部」のガイドラインが参考にされることが多いですが、商業物件にどこまで適用するかは、管理会社・貸主の判断に委ねられています。
大阪や兵庫でも、地域の商工会議所や不動産協会が基準を示していることがありますが、物件所有企業の独自ルールが優先されることがほとんどです。
つまり、原状回復の内容・費用は、最終的には賃貸借契約書とそのエリアの商慣行で決まることが多いのです。
本部が着目すべき契約上のポイント
退去前に、以下を契約書で確認することが、後のトラブルを防ぎます。
「原状回復」の具体的な定義
契約書に「原状回復」と書かれていても、「スケルトン返し」なのか「通常損耗の復旧のみ」なのか、明確な定義がない場合があります。曖昧な場合は、管理会社に書面で確認します。
造作・設備の帰属
特に厨房設備やサロン用設備は、取り付けた時点で「建物の一部」と見なされるか、「借主所有」と見なされるかが重要です。契約時に決まっていなければ、退去前に確認が必要です。
原状回復費用の一般的な負担額範囲
管理会社が「大体このくらい」という目安を示していれば、その根拠を確認します。根拠なく高額な見積りを求められている場合、交渉の余地がある可能性があります。
施工会社に相談する前に整理すべきこと
見積り依頼の前に、本部が契約内容を整理しておくと、施工会社も提案しやすくなります。
契約書の該当条文を施工会社に提供
契約書の「原状回復」「退去時の対応」の項目をコピーして、施工会社に渡します。これにより、施工会社が「何をやるべきか」を正確に把握できます。
管理会社からの指示内容
管理会社が具体的に「この部分を返してほしい」と示している部分があれば、それを施工会社に伝えます。
写真・図面
入居時の状態を示す写真や、当時の図面があれば、「返すべき状態」が明確になります。
播磨商事がサポートできること
播磨商事は、東京・埼玉・千葉・神奈川・静岡・大阪・兵庫での原状回復工事を多数手掛けており、各エリア・物件の特有なルールや慣行を把握しています。契約書の解釈や、管理会社との交渉で「これは借主が負担すべきか」と判断に迷った場合、経験に基づいてアドバイスすることができます。
また、複数店舗の同時退店の場合、各物件の条件を一覧化し、優先順位をつけて工事を進めることで、本部の手間を軽減できます。
まとめ
原状回復費用は、契約内容と地域の商慣行で大きく異なります。「通常損耗は貸主負担」という大原則を理解したうえで、自社のケースがこの原則にどう当てはまるか、契約書と管理会社の指示から判断することが重要です。
曖昧なまま工事に進むと、後から「追加費用が発生した」「想定外の費用を請求されている」といったトラブルになります。退去が決まった段階で、契約内容を確認し、必要に応じて管理会社と協議を重ねることが、透明性のある原状回復につながります。
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